date:2008.6/9

かるい二日酔いだし筋肉痛だし日焼け痛いしでけっして目覚めがよいとは言えない朝。ぼんやり眼をこすりながら、いつもの習慣でテレヴィをつけると、情報番組では昨日あったらしい事件一色。そんなことがあったなんて知らなかったぼくはただただ愕然とするのみ。繁華街にトラックが突っ込んできたというあたり、いささか安易とはいえ阿部和重がかつて書いた小説『シンセミア』のワンシーンを思い出さずにはおれず、しかしまったく関係ないストーリィなのにそういったディテールがもたらす、どことなく現実に点在する要素が小説によって加工されそれがまた現実に転写されたような既視感が、怖ろしい。今はほんとにひたすら唖然とするしかない事件だ。亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈りします。午前も午後も朴訥と仕事をしていたのだけど、夕方になるころにはドバっと疲れが溢れ出す。眠くなった。早く帰りたくなった。帰宅し、テレヴィの歌番組に出演していたマライア・キャリーを見つつ晩ごはんを済ませ、たまたまやっていた『NANA』の映画版を観てたのだけど、どうにも乗れず、DVDで『叫』黒沢清)を観ることにしたのだけど、この作品が描いている内容と出来にひたすら驚く。いってみればそれは「忘れられた者の復習」なのだろうけど、黒沢監督はその、現代にとって切実な問題を極めてラディカルな方法で描ききっているのだと思った。そしてなぜ『NANA』に乗り切れなかったのかもわかったような気がした。人間だけに頼っているから、かもね。とにかく『叫』は人間、背景、音、すべての要素が混ざり合って、不気味な空間と異質な時間が展開されている。そして久しぶりに観た葉月里緒奈は映画の中の女性とも奇妙にシンクロしてしまっている気がして、そこにいるだけで、あるいは顔が映るだけで、怖すぎた。凄かった。そして切実だった。新作の『トウキョウソナタ』はどうなっているのだろうか。期待大。……って、もちろん富山でもやるよね。だってカンヌで賞とってるし、キョン2が出てるし。やるよね、ね。